出葉の調色版@ラクイラ愛好会

出葉(てには)が震災のことや防災のことについていろいろ書くだけのブログ。震災記事書き起こし: http://te2ha.blog.jp/

イタリアの地震や防災についてのよくある誤解

誤解1:

イタリアで地震が起きると、被災者は快適な避難所やテントなどで暮らすことができる。

ラクイラ地震(2009/4/6)の「ごく一部」の事例が日本で注目されすぎているため、このような誤解が起こると考えられる。

確かに、ラクイラ地震の際、イタリア市民保護局によってテントが支給されていたが(出典: 「イタリア中部地震における心理社会的支援」)その環境は全員に行き渡っていたとは言い切れない。

実際余震による自宅の倒壊を恐れ、野宿をしている被災者もいる。(2009/4/7 朝日新聞夕刊より)

以下、朝日新聞から引用する。

「被災者の寝る場所の不足が深刻で、十数個の(※出葉による注釈: ラクイラ中心部にある陸上競技場での話である。一時的な避難所となり、数千人の避難者が集まった。)仮設テントが張られたが、全く数が足りない。多くの人が車中泊、または野宿をして一夜(出葉による注釈: 4/6の夜のことである)を過ごした。」

また、ラクイラアマトリーチェもまた同様であるが)は標高が高く、春先や夏場でも夜はかなり冷え込むため、とてもテント暮らしが快適とは言いづらいだろう。

参考資料:
【イタリア中部の大地震】現地の天気を解説 | ウェザーニュース http://weathernews.jp/s/topics/201608/250085/
 
その後もイタリアにおいては避難所と呼べるようなものは提供されずにいる。

現に「ラクイラ地震の際は、歴史的地区が大きな被害を受けたため、復興には膨大な時間がかかることが予想される。そのため、長期滞在に耐えうる質の高い環境を、短期間で整備することとした(出典:イタリアにおける震災復興プロセスに関する研究)」といわれている。

誤解2:

イタリアでは日本のように、被災後すぐに仮設住宅が被災者に提供される。

以下の記事(※イタリア語)によると、「震災(2016/8/24のもの)後1年の時点で、23%の仮設住宅が建設された」とある。

Terremoto Centro Italia, dopo un anno consegnato solo il 23% delle casette provvisorie richieste https://www.ilfattoquotidiano.it/2017/08/24/terremoto-centro-italia-dopo-un-anno-consegnato-solo-il-23-delle-casette-provvisorie-promesse/3813931/

このような事態なので、多くの被災者は親族の家に身を寄せるか、車中泊を強いられている。

1年もの間車中泊を強いられている人は少なくないとも報じられている。(出典: 国際報道2017 2017/8/25放送より)

誤解3:

ラクイラ地震で科学者に有罪判決が下ったのは、「地震予知」に失敗したからだ。

 ラクイラ地震(イタリアで2009年に起きた地震で、裁判が起きたもの)で科学者が禁錮6年の刑に処されたのは、「地震の予知に失敗したから」ではなく、「住民に迫りくる地震の切迫性を十分に警告しなかった」からである。

被災者自身も、地震予知が可能だなどとは一言も言っていないし、そう思ってすらいない。

ただ、政府当局が「当分地震は起きないだろう」といった、地震の切迫性を市民に伝えずに、地震のリスクを「過小評価した」ことが裁判で問われているのだ。

http://raytheory.jp/2012/10/201210_laquila7/

https://te2ha.hateblo.jp/entry/2018/09/17/094348

誤解4:
イタリアではそれほど地震が多くない。

イタリアで地震が多いのは、端的に言えばユーラシアプレートとアフリカプレートの収束境界部分にあたり断層が多いためであり、プレートが年間4-10mmのペースで動いているからであるが、この地域は地質構造が日本以上に複雑で、単純なプレートの沈み込みなどでは説明できない。
(引用: ウィキペディア「イタリアの地震一覧」 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A4%E3%82%BF%E3%83%AA%E3%82%A2%E3%81%AE%E5%9C%B0%E9%9C%87%E4%B8%80%E8%A6%A7

参考資料:

イタリアの避難所と災害復興―西日本豪雨で話題の「体育館生活」と比較して― https://togetter.com/li/1245834