ラクイラ地震の裁判に関する個人的な備忘録
地震予知は根本的に不可能です。
「ラドンと地震の関係は昔から指摘されてはいたが、電波の異常や地震雲なども同じく、メカニズムは未解明。(INGVより)」
ラクイラ地震(イタリアで2009年に起きた地震で、裁判が起きたもの)で科学者が禁錮6年の刑に処されたのは、「地震予知に失敗したから」ではなく、「住民に迫りくる地震の切迫性を十分に警告しなかった」からです。
「このような小さな規模で何日も続く地震を「群発地震」と言います.体で感じている現地の人はさぞかし不気味な,不安な気持ちになったことでしょう.このような群発地震が起きている状況の中で,3月上旬には,独自に地震予知情報を出す人が現れました.空気中のラドン濃度で予知情報を出したジュリアーニさんが有名ですが,他にも複数人いたとのことです.
ちなみに,空気中のラドン濃度で地震予知をする方法は確立されておらず,科学的にはむしろできないことが多く言われています.実際,ジュリアーニさんが予知をした震源地と,ラクイラ地震の本当の震源地はずれていて,本当に避難勧告をして大勢の人を動かしていたら,震源から遠い人をわざわざ震源地に避難させるという危険なことになっていた可能性がありました.このように,いかなる方法であれ,現段階での地震の発生予測には大きな不確定性が伴うのです.場所にも発生時刻にも.不確実性を少しでも小さくするには,地震という現象そのものを解明しなければなりません.地震学はまだこの段階なのです.」
「地元研究者が一週間前に地震を予知(後述するが、これは「予知」ではない)していたが、政府当局は「パニックを起こす」として削除させていた。瞬く間に地震のうわさが広まり、拡声器を使って住民に避難を促す住民もいた。」
(朝日新聞2009/4/7より)
遺族や被災者も、「地震予知は不可能」だということは百も承知です。ただ、「ラクイラを離れる」などの選択肢もとれたはすなのに、当局が地震の切迫性を住民に周知しなかったことの「責任」を問うているのです。
「さて訴追理由に話を戻します.地震がいつ起こるのか,どこで起こるのか,といったことは現段階の科学のレベルでは予知することはできません.ならばなぜ,安全宣言など出したのか.地震が起こるかどうかは分からないのであれば,安全宣言ではなく,念のため備えておいてください,と言うべきではないか,というのが遺族らの主張でした.」
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